幸せなら手を叩こう

思ったことを徒然なるままに

きみの友だち

こんにちは、タカハッピーです。

前々回の記事に引き続いて本を紹介します。

それがこちら。

きみの友だち (新潮文庫)

きみの友だち (新潮文庫)

重松清先生の「きみの友だち」です。
高校の友だちの、はるかぜちゃんからオススメされて読んでみました。
こんなに読書感想文を書いておいて言うのもなんですが、実は私はあまり本を読むのが得意ではありません。
は?何言ってんのと思いの方もいるでしょう。しかし、本当に苦手なのです。中学までは得意だと思ってました。しかし、高校に入って、授業で古典作品や評論などを読んだりすると、なんと全く読めなかったのです。
太宰治の作品が傑作だ、夏目漱石は必須だ、などと言われ、読書家としては読まなくては、とページをめくりますが、文字がただの無機質な並びにしか見えなくて、全然頭の中に吸収されないのです。評論もセンター試験のレベルでさえ、もうなんて書いてあるか理解ができず、ただ眺めるだけという感じになってしまうのです。
なので、児童文学レベルのものならスラスラ読めるけれど、そうでなければ読めない、ということがわかってしまったのです。
ショックでした。自分は本を読むのが好きだと思っていただけに、国語能力はめちゃくちゃ低いというのは受け入れがたい事実でした。
しかし、その中でも読める本がありました。
それが、辻村深月先生の本だったのです。
辻村深月先生の書く話は、人物像が生き生きとしていて、謎が少しずつ解明していき、伏線を全部回収していくのがとても面白くて、読んでいて止まりませんでした。児童文学じゃなくても読める。このことは本当に嬉しかったです。
なので、辻村深月先生以外の本を読むのは少し抵抗がありました。
けれど、せっかく友だちが勧めてくれたし、重松清先生は「赤ヘル1975」というカープの小説を書いているので興味がありました。(結局はカープ、それが私)
なので、手にとってみたわけです。
感想としては…
とっても良かったです。
男性とは思えないほど、女子中学生の細密な心理描写と人間関係を書いており、自分の中学の頃をひしひしと思い出しました。
主人公の恵美は交通事故で足が動かせなくなり、心を閉じてしまいます。しかし、その中で病弱な由香ちゃんととても仲良くなり、二人だけの世界を作っていきます。
私も中学の頃、友だちが全然いませんでした。前にブログに書きましたが、勉強ばかりしていたので、周りから「ガリ勉」と呼ばれてきみ悪がられてました。
部活も美術部に入っていましたが、正直「楽しかった?」と聞かれると「うーん…」と唸ってしまうと思います。
美術部では主に4人グループで行動していました。おーちゃん、やっちゃん、みーちゃん、私です。
私は学校生活で完全に1人ぼっちになるのが本当に怖くて、部活だけでも友だちといようとその4人グループの中で行動していました。
おーちゃんがリーダー格で、皆を仕切ってました。
「今度夏祭りがあるからみんなで行こうや」
おーちゃんがこう言うと、みんなは義務的に祭りに参加しなくてはなりません。
「ごめん、私金欠だしその日用事あるから」
私がそう断ると…
「は?なんで?意味不明」
と、その日からおーちゃんの指示でグループのみんなから無視されるようになります。
それはまるで世界が終わったかのようでした。私には友だちはその3人しかいないも同然なので、話しかけても無視、いないものとされ、しばらく一人で過ごさないといけなくなるのです。
おーちゃんが気がすむまで続くので、それが一ヶ月くらい続くのも珍しくありませんでした。
そんなある日、美術部の展覧会を会館で行う、ということで、会館に現地集合して皆で準備する、ということがありました。
私たち4人は、家がそれぞれ離れているので、まず私とみーちゃんが落ち合って、次におーちゃんとやっちゃんたちと合流しよう、という流れになりました。
当日。みーちゃんとの約束の集合場所に来ましたが、5分経っても10分たってもみーちゃんは現れません。
このままではおーちゃんと集合時刻がずれて、おーちゃんの機嫌が悪くなってしまう…でもみーちゃんは現れません。
15分たっても現れなかったので、私は走っておーちゃんとの集合場所に行きました。けれど、もう出て行ったのか、おーちゃんたちはいませんでした。
先に行ったということはそんなに待ってなかったのかな?と思いながら現地に向かうと…
「おい。なんで来なかったの?」
おーちゃんはめちゃくちゃ不機嫌でした。
「みーちゃんと約束してたんだけど、15分経っても現れなくて、だから遅れたの。ごめんね」
と私は謝りました。
「なにそれ?それってみーちゃんのせいにしてるよね?私何分待ったと思ってるの?いい加減にしてくれる????」
そう言われて、「無視」が始まりました。
途中でみーちゃんが現れ「ハッピー…ごめん…」と言いました。「いいよ…気にしないで…」とニコニコしましたが…
おーちゃんは私の言い訳にさらに腹を立てていたようで、「私」だけを仲間はずれにしました。みーちゃんがかわいそう。悪いのはハッピーなのにみーちゃんのせいにして本当に最低。

…どうしてこんなにおーちゃんのご機嫌を取らないといけないのだろう。
だってそうじゃないか、約束の時間になっても来なかったのはみーちゃんじゃないか、私は本当のことしか言ってないじゃないか、なんでそんなことで責められて無視されないといけないんだ、頭悪すぎだろ、ああ、本当にめんどくさい……………
一人でいるのが怖かったはずなのに、「友だち」といる時も一人になることを恐れていました。いつ無視され、仲間はずれにされるのかわからない。ぶるぶると怯えるのを隠して笑顔で皆と関わるようにしていく。
…これは本当に「友だち」だったのか?
この本を読むと、本当にそう思いました。
恵美は由香と二人で仲良くしていました。恵美は「みんなを信じない」と、由香だけと交際していくのです。
でも、それって本当に幸せな友情じゃないかな、と思います。友だちは数ではありません。その人とどれだけ深く関われ、信頼していけるかにあると思います。無視されるのが怖いから祭りに行く。仲間はずれにされるのが怖いから機嫌をとる。こんなの、絶対おかしいです。
中学校というナイーブな時期ならではだと思いますが、人間関係というのがあの頃は本当にしんどかった。友だちがたくさん欲しかったのではなくて本当は信頼できる人が欲しかったんだろうな。と、あとあと思いました。
友だちというものに正解はないかもしれない。けれど、恵美たちは本当に幸せと言える関係だったんだろうな。そんな風に思いました。
それでは、さようなら。