幸せなら手を叩こう

思ったことを徒然なるままに

きのうの影踏み

噂話。
果たしてそれはどこから始まり、どう広まっていくのか。
私も考えたことがある。
きのうの影踏み (角川文庫)

きのうの影踏み (角川文庫)

「きのうの影踏み」の「噂地図」という話の中に、噂話は果たして誰が根源で、どう広まっていくのかを調べる「噂地図」を書く様子がある。
「晶子ちゃんと鳥飼くんが付き合ってる」という噂が流れる。それは、一組の瀬川美亜さんから聞いた。瀬川さんは飯久保さんから。飯久保さんは…と、どんどん点と線をつなげるようにして地図を作っていくのだ。
噂地図を作ったことはないけれど、噂の根源を徹底的に調べられそうになった経験ならある。
私が中学生の頃、Tちゃんの筆箱がゴミ箱の中から発見された、というちょっとした事件が起きた。それも一回ではない。何度か繰り返された。
学校の先生は躍起になって犯人を探した。
「ちょっとした情報でもいい。何か知ってることがあったら紙に書いて欲しい」
学年集会が起き、皆で紙に書いて出した。
私はその時、Tちゃんと仲の良かったAちゃんが犯人なのではないか、と書いた。何せ繰り返し起きた事件なので、先生が学年集会を開く前から「あの子、いつもTちゃんのそばにいるし犯人なんじゃないの」と噂が流れていた。
私以外の人間も書いていたのだろう。Aちゃんは先生に呼ばれ、犯人かどうか確認されていた。
「違います。私はしていません」
どうやら違ったようだった。
やはり噂話だったか…私を含む皆がそう思っていると、今度は「Aちゃんが犯人だと悪質な噂を最初に流した人間は誰か」と先生たちは一人一人を呼び出し確認を取り出した。

…バカじゃないの?

あんたら本当に先生なのか?そんなのわかるわけがない。「はい私が噂を流しました」と流した人が言うわけないし、その悪質な噂を流した人が誰かわかったところで何になる。反省させられるとでも思ってるんだろうか?

しかし、そんな私の思いも届かず。先生たちは噂地図を作るように一人一人を呼び出し「その噂話は誰に聞いたの?」と聞いていった。

当然だが噂の根源はわからなかった。

噂なんて誰かが思いつきで言ってるだろうし、聞いてる方も適当なものだと思う。結局噂話はエンターテイメントでしかなく、それを綺麗に筋道たてて作るなんて無茶だ。

だから「噂地図」の主人公も、適当に作れるとでっちあげたのだと思う。
適当に作っても、真相なんてわかるはずないのだから。
でも、噂を誰がはじめて、広げていったのか。そのことを調べるのは少し面白そうだとは思う。
Tちゃん筆箱事件の犯人は、Tちゃんに片想いし、告白するも玉砕した男の子らしかった。…これは犯人扱いされたAちゃんから聞いた話だ。「彼は動機が十分にある」と彼女は言っていた。その時は「ああなるほど」と思っていたけれど、その噂の根源は?誰かから聞いたのか、それとも現場を見たのか。もしかしたらAちゃんが自分で勝手に作り上げて言ってるのか…真相は絶対にわからない。でも探偵のように、調べていってその事実に近づいていくことはワクワクするだろう。
そんな風に思う。

これから先、なんなら今現在も噂話は飛び交ってる。その根源を調べる気力は正直ない。でも、根拠なしにでっちあげようなんてことは絶対にしないようにしよう。そう思った。

皆さんもぜひ、「きのうの影踏み」を読んでみてください。

それでは、さようなら。